キッカケは先月末(9月末)のたしか17時くらいだったと思います。
Yさまが「娘に電話してほしい。」そうお話しいただきました。
よくよく聞いてみると、ティッシュとそしてもう一つ、自宅にある歩行器を持ってきてもらいたいとのことでした。
「歩く練習がしたいんだ。」そうYさまは教えてくださいました。
Yさまは意志の強い方で、やると決めたことはやるまで気が済まない。この意思を大切にしたい。そう思い、その日のうちにすぐさまご家族様(娘さん)にアポを取り、Yさまとお電話いただきました。そこで歩行器を持ってきていただく事になりました。
Yさま本人はとてもやる気です。ただ、持ってきていただいた歩行器を見ると、今のYさまの状態からすると少し危険です。速度にブレーキの利かない、シンプルに車輪がついているタイプでした。現状、基本車いす生活で歩くこと自体に慣れていないY様には危険と判断しました。
そこで機能訓練指導員と相談し、もともと施設にある抑速ブレーキの付いた歩行器をまず使うことから始めて、慣れてきたらご自宅から持ってきた歩行器に変える計画を立てました。
・毎日歩行訓練を行う。
・毎日午後(ユニットが落ち着いたら)スタッフ一名付き添いのもと行う。
・時間は10分~15分。
・ユニットとエレベーターホールを休憩を取りながら2周する。
そしてもう一つ、歩行訓練に合わせて、ご家族様と相談し、靴も買い替えることにしました。現状は歩行向きでないない靴でしたので、よりホールドの利くしっかりと歩ける靴に変更しました。
こうやって、最終的には、一人でご自宅から持ってきた歩行器を使って歩けるように、Yさまのチャレンジが始まりました。
現在進行形です。
Yさまは車いす生活の方でした。その方がある日どうして歩きたいと意思を発したのか。直接聞くには、せっかく家にある歩行器を使わないと勿体ないとおっしゃっておりましたが、理由は他にあると思っています。その本心も同時に探っていきたいと思います。
後日談ですが、
「一人で歩けるようになったら、何がしたいですか?」そう尋ねると、
「家に帰りたいんだよ。」と教えてくださいます。
旦那さまが亡くなり、四十九日を迎えたこともあり、帰りたいのかなと想像します。
今回の様に、Yさまの様にご自分から意思表示をしていただく方は助かります。ただ意思表示をしてくれない、出来ない方も勿論います。その方の声なき声をどうくみ取っていくかが一方で課題です。
本人に直接、何がしたいですか?と聞いたところで、何もないとしかおっしゃいません。それはそうです。そんな質問をされて答えられる人の方が少ないと思います。
ですが、普段のその方の生活シーンを細かく観察するとヒントは必ずあります。テレビも見ていてふとした瞬間のボヤキとか、食事中の目線、居室での過ごし方など。
あとは、ご家族様にこれまでの生活の様子をお伺いするだけでも必ずヒントを見つけることが出来ます。
ご家族様へお伺いすることは重要です。もちろんヒントを得るという意味でもありますが、何かしたい、してあげたいという思いは、我々職員よりご家族様こそ強く持っています。その思いを実現するためにもお伺いは大切と思います。
そして、忘れていけないことは本人の思いを大切にするスピード感です。利用者様は明日を約束されていません。いつ最期を迎えるかも分かりません。悠長なことを言ってはいられないのです。本人も、ご家族様も、我々も後悔しないために出来ることを出来るうちにする。その出来るうちとは今その時なのです。「思い立ったが吉日」。まさにその通りです。
ただ今回の事例、胸を張れることだけではありません。
Yさまの声を頂いてからのスピードを大事にしたあまり、振り返ると、関係スタッフへの共有がおろそかだったと反省しています。それで迷惑をかけてしまった場面もありました。ここは次に改善すべき反省です。スピードを落とさずにチーム連携も怠らない。改めて意識していきます。
パライソごしき ロンドン・パリ
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